2014年04月29日

紫根との出会い2

紫草クリーム.jpg

当帰・紫根の薬効に着目し独自の研究を重ねて初めて世に送りしたのが昭和48年7月。製品名「バイオレット」の誕生でした。次いで昭和52年11月には蜜蝋を加えず頭皮や髪にも使えるようオイル状に仕上げた「しなやか」を発売。そして昭和60年から立ち上げた王朝美容料シリーズ商品として67年11月にバイオレットに練りを加えチューブに充填した整肌膏「彩」をリリースしました。当時はバブル全盛期。女性のみならず男性にも大人気でゴルフやサーフィンなどのアウトドアスポーツの日焼け対策用アイテムとしても重宝されました。

また近年オーガニックコスメの普及活動を展開するアイシス様とのご縁によって復刻誕生した「紫草クリーム」は、バイオレット発売へと至る過程で確立した製法で造る和漢方の原典処方により近い製品。しっとりと輝く初代当時のテクスチュアを再現する技は熟練した当社の美容料職人ならではのものです。この「紫草クリーム」は先日東京新聞の「エコな一品」に紹介され大反響を頂いています。

手造りオイル石鹸.jpg

一方、洗顔アイテムとして平成20年に「しなやか」を配合したオイル石鹸を昔ながらの釜炊き製法を守る石鹸メーカー桶谷石鹸様とのコラボレーションによって商品化。「しなやか」の赤紫色が石鹸のアルカリによって淡い紫色に発色し、天然素材ならではの美しいマーブル模様が自然の妙を感じさせる手造りの逸品として高い評価を頂いています。

紫根染めは平安期から行われ、源氏物語の作者紫式部もムラサキを愛した女流作家として知られていますが、紫染めを学ぶことから始めた私も紫根への愛着はひとしお。いつも平安のロマンに思いを馳せながら丹念な製品造りを心掛けています。
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2014年04月24日

紫根との出会い

草木染3

漢萌と私1〜3で創業当時から糠袋、化粧水をご紹介させていただきましたが、次に手掛けたのがお肌のカサツキを抑えお肌を保護するものとして古来から伝えられてきた生薬についての研究。そして様々な資料を集めて紐解く過程の中でようやく当帰・紫根の薬効に辿り着きました。

当時社長は「何事も手習いこそが大事。紫根をよく知るためには先ず紫根染めの手ほどきを受けるべき」と私を京都山科の草木染研究所行きをすすめてくれました。

残念ながら当時の記録は一部しか残っていませんが、用意された染液に前処理した布を浸し、椿の灰汁を媒染剤として使用し3〜4回作業を繰り返して染め上げ仕上げました。その間染液の作り方や媒染剤の作り方などを教わりました。先日その折の作品の袱紗を40年振りに出してみると仕舞い込んだままにしていたためか多少の色ムラと色褪せがありましたが何とも幼く懐かしい温かみがありました。

一方、研修の際特別に譲っていただいた先生の茜染めの帯揚げは娘が嫁ぐ時に持たせました。今でも大切に愛用しているそうですが最近その帯揚げがとても気になり、先日送ってもらい久々に目にすることができましたが、絹に染めた本物の草木染は使い込むことでさらに色香が増し、一層の優しさと和みが感じられました。

京都での研修を終えた後、美容膏や美容オイル造りに本格的に着手することになり様々な油で煎じるテストを繰り返しました。しばらくは天ぷら作り同様の作業に揚げ物拒否になったほどです。

当帰は当時も今も大和産大深当帰を使用しています。紫根は当初モンゴル産の野生で、昭和40年〜60年位までは品質の非常に良いものが入手できました。熱したゴマ油に入れると一面見事な赤紫に発色したものです。また丁寧な濾過作業にもこだわるとともに容器に詰める技にも工夫を凝らしました。それら技術を総合した製品は分注して4〜5日経つと色が落ち着き艶やかな輝きさえ出来ていました。

美容膏造りは一子相伝。昭和52年に二代目に技術を伝えた当時には人気商品となり量産のための工夫も加えられました。私と二人三脚で随分長く現場を支えてくれましたが、やがてその技は三代目へと引き継がれ、そしていま既に四代目へと継承されています。

2010年あるテレビ番組で紫根を使ったオリジナル化粧水でしみが消えたという内容が放映されたのをきっかけに日本中の紫根が一時買い占められて品薄となり大変困りました。その上さらに主な原産地であるアジア諸国の経済発展により生薬資源が減少。紫根の野生品の品質にもムラが生じ、当時のような艶やかな輝きの品質を確保するのにも一苦労するようになりました。

あれから数年。今ようやく品質の安定をみながらも、四代目は当帰の配合や温度調整にも工夫して当時とほぼ変わらぬ色と香りに優れた製品づくりを維持してくれています。
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