そして季節は秋。庭には桔梗、秋明菊、萩と秋を告げる草花を見ながら母がよく玉露を入れてくれました。一煎、二煎、三煎それぞれの美味しい入れ方や、その香りや味わいの違いなど日本茶の奥深い魅力について教えてもらいました。四煎目は煎じてお茶漬けに最高であり、その出がらしは干してやがて主人の枕になりました。煎茶道具の可愛さや母と主人の多岐にわたる語らいも含め教わる事は多く心和やかな朝の一時でした。
立冬に入ると炉の畳に入れ替え障子貼りと冬支度に短日に忙しくほっとする間もなく初めて迎えるお正月の準備。お道具も母から習いながらしつらえていきました。加えてお正月用の着物一式を整え主人は紋付きの羽織り・袴、母も私も晴れ着で迎えました。
元旦はまず庭に出て日の本を拝し、神様(棚)に一年の無事を祈願するとともにご先祖様(仏壇)に新年のご挨拶をしてお膳に着きお屠蘇で新春を寿ぐという清々しい初春(はつはる)でした。
母と親戚の方とお正月に
二日目からはお客様で賑わいました。ごく普通の家庭でのお正月の迎え方でしたが、歳事をことの他大切に思っていた母から伝え受けた諸事を娘が嫁ぐまで続けました。今は主人と二人それなりのしつらえを楽しみ静かなお正月を過ごしています。
折々の歳事に触れて感じる家庭の温もりや祖先を敬う祈りの心のように、私たちの暮らしとともにある美しい内なるものは連綿と受け継がれてゆくべき大切な文化だと思います。まだまだこれから来年も学ぶ、教わる、習う事も多く、常に感動、感謝、感激する日々であるよう願っています。今年一年ありがとうございました。